最近筆者のお客様から、「マーケティングオートメーションって導入すべきですかね?」と相談を受けるケースが多いです。読者の中にも一度は検討された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、マーケティングオートメーションの概要や必要性について考察したいと思います。
目次
- マーケティングオートメーション(MA)とは
- MAの市場規模
- 企業の競争戦略とMAの必要性
- MA導入の本当の目的
- MAの導入についての筆者意見
マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーションとは、顧客のWeb行動から興味・関心を読み取り、メールやSNSを通じ顧客に購買を促す通知を自動的に送る仕組みのことである。
皆様も、何かを購入した後やWebページを閲覧中に店舗やそのブランドからDMが届いたという経験をしたことがあるのではないでしょうか。
これらは、単純にDMを送付している訳ではなく、購買履歴やHPの閲覧履歴を基に自動的にメッセージが送られるようにプログラムされています。
HPの閲覧履歴がお店側に見られているのは結構驚きですよね。
各企業はこういったものを駆使しながら顧客の購買を促進したり、興味・関心の育成を行っているのです。
MAの市場規模
国内B to B企業でのMA採用数は、2021年現在で約1万社と言われています。
これって多いのでしょうか?少ないのでしょうか?
総務省と経済産業省が31日に発表した経済センサス活動調査(速報)によると、2021年6月時点の全国の企業数は367万4000社、民間事業所数は507万8000カ所です。
1万社/367万社=0.2%です。
ただし、367万社の内、自社製品の販売促進に最も重きを置いているB to B企業数は2.5万社だと言われています。そうすると、販売促進に力を入れているB to B企業の中でMAを導入している割合は、
1万社/2.5万社=40%となります。
B to BとB to Cが分けられて集計されていないので、やや信憑性にかける計算ですが、驚くのは、自社製品の販売促進に力を入れている企業数の少なさです。(仮に純粋なB to B企業が100万社だとしても、非常に少ない数字となります。)実は、B to B企業では、人材育成や獲得・老朽化設備の改修や維持・企業の売却など販売促進以外に課題を抱えている企業が多いのです。
もちろん、自社製品が売れれば嬉しいと思っている企業は多いのですが、意外と本気で販売戦略を考えている企業は少ないのです。
次に、自社製品の販売促進に最も重きを置いている企業2.5万社の内、40%の企業がMAを利用しているという割合の多さです。現在MA市場は17%/年の成長率と言われており、2030年くらいまでに、2.5万社に到達すると言われております。
物が売れない時代に入り、物が売れない前提での企業戦略を考えている企業が多くなってきたのだと思います。一方で、自社製品の販売促進に力を入れている企業の多くはデジタル化に舵を切っているという現実があります。
企業の競争戦略とMAの必要性
企業戦略は企業それぞれですが、販売戦略に舵を切る企業はSWOTの中のSとO、要するに市場のニーズやチャンス(O)と自社の強み(S)を掛け合わせて売る製品を検討していく。
また、このようにして売る製品と参入するマーケットが決まった企業は、高いシェアを獲得していく戦略を取ることが多いのではと思います。
では、高いシェアを獲得していくために、何が必要でしょうか。
確率思考の戦略論/著者 森岡毅によると、企業戦略は、①好意度、②認知、③配荷を如何に高めていくかであると述べています。私の認識の中で述べると、「認知度を上げ、そのサービスを利用できる環境を整え、顧客満足度を高めることが出来ればブランドが確立され、売上伸びていく」ということになるかと思います。
さて、ここからは私の担当する顧客の話になりますが、上記の内①に焦点を当てている企業様は多いように思います。一方で、②の認知に関しては営業に任せきりで、まとまった数量が中々取りきれない結果、③そのサービスを利用できる環境作りに投資が出来ないでいる企業が散見されるのです。
簡単に言うと、「認知」を正しく行えていない企業が多いのです。
ここでMAの出番となるのです。B to BであれB to Cであれ、メールやSNSによって顧客のPCやスマホへ通知を行うことで認知度を上げていくのです。
ただ、単純にMAを利用するだけで本当に認知度を上げ、購買を促し、投資に必要なデータを取得できるのでしょうか??
MA導入の本当の目的
はっきり言いましょう。MAを導入しただけで顧客獲得は出来ません。展示会を行った後のサンキューメールや新商品開発後のDM送付を行うだけでは、よほど企業名が知れ渡っていて製品力が強力でない限り、大した効果は得られないのです。
想像して見てください。自動車部品メーカの調達部であったとして、ある企業が製造可能製品のDMや自社の設備情報が送られてきたとしてメールを開きますか?ドンピシャで探しているものの通知でない限り、すぐにゴミ箱行きだと思います。
通常、人は商品説明や売り込みのメールに多くの興味を示さないのです。
反対に、あなたがゴルフが好きだったとして、「22歳の女性コーチが新任しました!!」とか、「イケメンコーチの写真付きワンポイントレッスン!!」などの表題でDMが送られてきたらメールを開きませんか?さらに、女性コーチのブログや、イケメンコーチの育成実績などが掲載してあるURLがメールにあれば、そのURLを開きませんか?
MAとはこういうことなのです。属性や趣向によってメールを出し分け開封率をあげる工夫が必要です。更にメールに興味を醸成するような仕掛けを作っておき、顧客を育成していくことが目的なのです。これによって、見込み顧客を増やしていければ自ずと認知度が上がり顧客の興味も見えてくるのです。
これは、難しくもありますが、ウェブマーケターの腕の見せ所や楽しさでもあるのです。
MAの導入についての筆者意見
これらを、踏まえた上で筆者の意見です。
個人的には、これだけ販売戦略に力を入れて「いない」企業が多いというデータがある以上、販売戦略に力を入れることは非常に大きな可能性を秘めていると考えます。多くの企業は自社の商圏を失わないために必死の抵抗を示してきます。なので、短期決戦ではシェアを奪えない可能性は高いです。人を使った営業はどうしても短期決戦になりがちです。そんな中、長期的な認知を高めるノウハウを手に入れた企業の勝率が上がるのは当然と言えるでしょう。
MAを活用するにあたり、人を振り向かせるための工夫や継続的なメッセージ内容の改善は不可欠になって来るでしょう。
これ面倒だと思いますか??
私はこれこそ企業努力なのではないかと思います。営業であれMAの活用であれ顧客が何を求めているかを考え、常に工夫することは基本であると思います。MAはきちっとやる覚悟があれば、非常に強力な道具となり得るでしょう。